Mt.fujiジビエ加工センター Dear Deer
Taku SakaushiHirofumi NakagawaArchitecture
2024
CREDIT
作品タイトル
Mt.fujiジビエ加工センター Dear Deer
発注者
富士吉田市
意匠設計監理
坂牛卓+中川宏文
構造設計監理
株式会社ディックス(担当:辻、飯山)
設備設計
テーテンス事務所(担当:新井、勅使川原)
設備監理
田村設備設計監理(担当:田村)オンサイト計画設計事務所
外構設計
オンサイト計画設計事務所(担当:戸田、生田) +iku design(担当:木田
ビジュアル デザイン
株式会社フロウプラトウ(担当:佐藤、小島)
オブジェ デザイン
株式会社OFF-FLAT(担当:細野)
ブック ディレクション
株式会社ORDINARY BOOKS(担当:三條)
施工
建築:渡秀工業株式会社(担当:渡辺(秀)、渡辺(博)) 電気:サンコー電気株式会社(担当:長田) 設備:宮下設備工業株式会社(担当:宮下)
展示造形施工
emo株式会社(担当:清瀬)
写真
渡辺竜康 中川宏文
DATA
竣工
2024年
所在地
山梨県富士吉田市
主要用途
食肉加工+物販+教育
構造・構法
RC造+木造一部鉄骨造
敷地面積
2272.80m2
建築面積
410.69m2
延べ床面積
332.76m2
階数
地上1階
富士山の生態系の保全と人々に開かれた処理加工所
富士山周辺の野生鹿の生息密度は高く、その食害は山麓の農地から富士山の高山帯まで広範囲に広がっている。森林帯では、富士山固有の植物や、植樹された若木の芽や葉が食べられることによって、生態系にも大きな影響を与えている。近年、行政は適正な頭数になるまで野生鹿の捕獲を進めてきたが、周辺に専門的な処理を行える施設がないため、捕獲された鹿の多くは埋設処理されてきた。富士山麓で育った野生鹿の命を無駄にせず、地域資源として活用することで新たな循環を生み出し、鳥獣被害の防止や富士山の生態系の保全に繋げるために本計画が立ち上がった。
このような処理加工施設は、嫌悪施設として市街地から離れた場所に設置されていることが多く、環境保全や持続可能な社会のあり方を考える上でとても重要な施設であるにもかかわらず、一般の人たちが親しみにくい場所にある。しかし、本施設は年間200万人が訪れる道の駅エリアに隣接したカラマツ林の一角を敷地とし、処理加工機能だけでなく、ジビエ加工品の販売を通した集客機能や、地産地消やジビエ文化、命の大切さについて考えるきっかけとなるような教育機能が求められた。
周辺環境と接続する配置計画
前述した社会的背景や地理的要因から、処理加工施設と集客・教育施設の相反する機能を敷地の中にどのよう共存させるかが重要な課題であった。そこで、処理加工所の長細いボリュームは、接道に沿うように配置することによって個体の搬入から加工までをスムーズに行えるよう機能的に計画した。集客・教育機能を担う店舗、展示、サイン、見学窓部分などのアプローチ部分はカラマツ林側に配置し、建築とカラマツ林に囲まれたランドスケープをつくることによって、この場所を訪れた人々が自然の中でゆっくりと過ごせる場所を計画した。
建築とランドスケープを繋ぐ裳階
建物は加工室や保管室が機能的におさめられた切妻大屋根のボリュームと、 加工食品などを販売する集客(教育)機能がおさめられた木造+鉄骨造の軽やかな裳階の2つで構成されている。裳階は、平面トラスと鉄骨柱の架構によってリズムを生み出し、訪れた人々を建物奥の店舗スペースへと導く。加えて軒高を低く抑えて建築全体の重心を下げ、デッキテラスや芝生広場への連続性を高めている。 切妻大屋根がつくる水平性と周辺の木立の垂直性、優雅な曲線を描く裳階とランドスケープの有機的なかたちは、この場所に、人、建築、ランドスケープ、自然の調和した風景を生み出している。 (坂牛卓+中川宏文)