喫茶檸檬
Hirofumi NakagawaArchitecture
2021
CREDIT
作品タイトル
喫茶檸檬
設計
中川宏文+山本稜(Spicy Architects)
構造アドバイス
辻拓也
ディレクション
千原徹也(れもんらいふ)
マネージメント
永谷亜矢子
施工
富士エコトープミレニアム
サイン制作
Aoi neon
壁画
中島盛夫
植栽
Tan
写真
楠瀬友将
DATA
竣工
2021
所在地
山梨県富士吉田市
主要用途
飲食店
延べ床面積
82.49m2
階数
地上1階
〈喫茶檸檬〉は富士吉田市の「富士吉田市本町通り活性化プロジェクト」としてつくられた。
富士山に日本一近いといわれる山梨県富士吉田市。市内の至るところから大迫力の富士山を望むことができ、中でも「富士山がきれいに見える商店街」として、富士吉田市本町通りはメディアからも注目されている。1,000年以上続く繊維のまちとしても知られ、ファッションブランドの産地として活気溢れるまちとして発展した。しかし、昭和50年代に入ると経済はグローバル化し、低廉な製品が国内に流通し衰退。通り自体は閑散とし空き家や空き店舗が増え、シャッター商店街と化しているのが現状だ。
本プロジェクトは、この本町通りを起点に地域の伝統産業を活用した事業と、地産地消を目指し地元の農作物を使用した運営を行い、空き家や空き店舗を活用し、内装のリノベーション、コンテンツ制作、PR力のあるクリエイターを誘致した長期運営を行い地域の更なる活性化を目的としたプロジェクトである。本プロジェクトを、地域の空き家など活用のモデルケースとしてPRすることで、新たな出店や移住、2拠点居住、ワーケーションの場所として、内外からのニーズや投資を増やしていくことでさらなる地域の活性化を目指している。
〈喫茶檸檬〉を運営・プロデュースする、東京のデザイン事務所 れもんらいふは、富士吉田の資源と東京のクリエイティブが混ざり合う場所にしたいという思いがあった。
そこで我々は、ここに来る多様な人々の活動が街の日常の風景の一部として切り取られ、またある時には映画のワンシーンのような非日常の瞬間として映えるように、2つの舞台を設えることにした。
1つ目は、前面道路の本町通りに対する舞台である。基礎補強を兼ねた新たな床面は、通りより400mm程度高く設定している。そこに、左右対称、幅7,280mm、高さ2,400mmの大きな開口部を設けることで、通りに対して舞台ステージのようなフレームをつくりあげた。日々、店内で繰り広げられるさまざまな風景が、映画のワンシーンのようにこの通りに映し出されていく。
このステージはその他にも、機能的に重要な役割を果たしている。通りと店内の間に断面的な距離を生み出すことが、その1つに挙げられる。本町通りは道幅のわりに交通量が多く、大型車両なども多く行き交う通りである。道路面より店内を少し高く設定することで、断面的な距離をつくり、店内に居る人が落ち着いて過ごせる環境を整えることを目指した。そして、街を行き交う人々のストリートファニチャーとして機能することがある。軒下の段差の一部は、ちょうど椅子くらいの高さになっており、近所を散歩している地元民や、観光客が気軽に足を休める場所になることを期待している。
2つ目の舞台装置は、店内の半分の面積を占めるオープンキッチンとハイカウンターである。中で行われている作業工程がどこからもでも見渡すことができ、客とシェフの出会いを高めた構成とした。天井に用いた中空ポリカーボネート板は、光が反射するレフ板のような働きをしてキッチンとその活動を引き立てる。客とシェフの出会いや活動が引き立つように、ハイカウンター素材や形状はシンプルに留めた。
舞台のような同店でシェフ、スタッフ、客が活気を生み出し、通りや街に賑わいが増える未来に期待したい。
(中川宏文+山本 稜)