言葉と建築(翻訳)

Taku SakaushiPublication

2005

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CREDIT

タイトル

言葉と建築

著者

エイドリアン・フォーティー

翻訳

坂牛 卓,辺見 浩久

出版社

鹿島出版会

DATA

発売日

2005/12/23

ページ

544

言語

日本語

すでにできあがった建築を体験し言語化すること、それだけが言葉と建築の関係であるわけではない。建築はそもそも発想され図面を引かれ建てられていく創造の過程において言葉と関わらざるをえない。
 「デザイン」や「フォーム」あるいは「機能」や「構造」、自明のようで、しかしこうした言葉ほど、歴史の中で意味の微妙な変容を見せてきたものはない。建築家たちは、これらの言葉をどんなふうに用いてきたのだろうか。おびただしい引用文の解釈を通して、著者は建築という複雑な文化的社会的実践がいかに言葉と不可分な関係において捉えられなければならないかを明らかにしてくれる。言葉に反撥し、言葉に背馳し、言葉とは無縁であろうとしながら、しかしまた言葉に導かれ、言葉に支えられ、言葉に囲繞される芸術というすぐれて感性的な世界の中で、建築ほど言葉との微妙にして緊張した関係を強いられるものはないのかもしれない。
 建築のモダニズムは、ミース・ファン・デル・ローエの「おしゃべりしないで建てろ」という言葉に象徴される純粋主義に貫かれたともいえるが、そのモダニズムがいかに言葉と関係したかを明らかにしてくれることこそ本書の醍醐味というべきだろう。本書は建築の専門用語の解説書ではない。これは、美術史上でパノフスキーが『イデア』という書物でやったことを、建築のモダニズムに対して試みようとしたと驚くべき力業である。建築について考えようとする者にとって、本書が不可欠の文献になるだろうことは間違いない。(谷川渥氏、推薦のことばより)