松の木のあるギャラリー
Taku SakaushiArchitecture
2013
CREDIT
作品タイトル
松の木のあるギャラリー
意匠設計監理
坂牛卓+竹内宏俊+平井直樹
構造設計監理
長坂設計工舎
施工
郡司建設
写真
上田宏
DATA
竣工
2013
所在地
茨城県
主要用途
事務所
構造・構法
木造
敷地面積
819.71m2
建築面積
103.95m2
延べ床面積
122.23m2
階数
地上2階
課題を見つける
水戸に建つ企業のギャラリーである。この企業は100年前にこの場所で創業した。この建物は創業者の作った本社ビルを作り替えたものである。5代目社長の最初のリクエストは東日本大震災で崩壊寸前になった創業本社建屋を修復するものだった。しかしこの建物の前面道路が計画道路でリノベするなら10メートルセットバックが必要だった。しかしダメージを受けたこの建物は曳家が難しかった。クライアントの下した決断は10メートルセットバックしたところに元の建物と同じ大きさの同じ色の建物を作ることだった。それは100年の歴史を蓄積し家族の記憶の継承とすることがまずは最初の課題であった(感情)。
新しく作る建物は創業以来の企業の歴史的な記念品を展示しておきたいとのことだった。小さなギャラリーなのだが、おそらくそれは現本社からも遠いし単なる倉庫になるのではないかと危惧した。そこで新たな地域への開かれた空間を挿入することを提案し了承された。よってこの建物の最初の課題はこの開かれた場所の作り方だった(共同性)。この開かれた空間と復元する空間をどのように組み合わせるのかが次なる課題だった。
答えの作り方
開かれた空間は地域へのことを考えると道路側に作るのがよかろうと最初は思った。しかし前面道路は交通量が多くたとえ開いたとしても心地よい空間になるとは思えなかった。そこで逆側に開きその前面に庭を作り庭に開かれた縁側の設えとした。さらに昔からその庭に植えられていた松の木が古く創業一族の記憶に残る木ということでその木を残すことにした。その木を一望できる開かれた空間を考えメガホンのように広がった空間を挿入することにした(形状)(階層・平坦性)。
そのメガホン型の空間と復元した切り妻屋根のオレンジの空間(色)(共同性)をどのように接合するかが次なるテーマであった。ここに連続的な二つな空間を並べるのではなく、不連続な空間を接続しようと考えた。リフレーム空間の必要性をこの頃感じていたからであろう(協調・独立性)。そこで開かれたメガホン型空間は内側を木と畳の空間としながらも、外側は黒いリン酸処理した亜鉛メッキ鋼板で包んだ。それをオレンジの復元切妻の内部空間の中に挿入した(色)(肌理)。それによって庭に開かれた明るい木質和風と、2×12インチの家型フレームで支えられた大空間の衝突が生まれた。
この不連続性はもちろん全体性を考えた統一ではなく部分を部分で考えてぶつけるという関係性で成り立っている(部分性・全体性)。また平面形の作り方は松の木の位置をきっかけに斜め線を方形ボックスに差し込むデザインとして考えられた(形状)。色についてはオリジナルの色とはいえ大胆なオレンジ色であるが黒い鉄板と適度なコントラスト生み出していると考えている(色)。